慶應義塾大学 理工学部 機械工学科

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研究に関するFAQ

物理現象の解明に興味があります。機械工学科ではどのようなことを学べますか?

一例を挙げれば、熱機関の発明は「もの燃せば熱エネルギーから力学的な仕事をとりだせる」ことを身近なものにしてくれましたが、では何をどんな条件で燃やし、どのような機構で仕事を取り出せば効率が良いか、また、どうやって作るか、耐久性は、安全性は、環境への負荷は、といったことを調べ、より良いものを作る、といった能力を身に付けるための学問体系が機械工学と言えるでしょう。より詳細な分析をする課程で、熱機関に限らず、一見不思議な物理現象に出会うことが良くあります。機械工学科で「物理現象の解明」という場合、単なる好奇心に従って思いつきで解明するというよりも、何か問題を解決したいという強い目的意識をもったものだと言えると思います。そのときに問われるのが基礎学力であり普遍的な知識でしょう。


将来航空・宇宙開発に携わりたいのですが,航空・宇宙について学ぶことは可能ですか?

宇宙開発には広い範囲にわたる最新科学技術が利用されています。機械工学科で学ぶ分野、つまり熱、流体、材料、制御、構造といった全ての分野が深く関連しています。それは、機械工学が工学の根幹を担う分野であるからとも言えます。 将来を見据えて機械工学を学び宇宙開発に携わる仕事に就くことは可能で、多くの先輩はその道を歩んでいます。また、当学科の幾つかの研究室では、研究テーマが宇宙開発に深く関わっています。大学での研究においても宇宙開発に携わることは可能です。たとえば、私の研究室では、宇宙推進や超音速燃焼をテーマに、圧縮性流体と化学反応(燃焼)との複合問題を数多く取り扱っています。


ロボット開発をしたいのですが,ロボット工学については学べますか?

菅教授、山崎教授、三井教授、森田専任講師, 三木専任講師など、多くの教員の研究室でロボットに関わる研究を行っています。 新しいデバイスやロボットを設計するためには、物理現象の本質的な理解と、それを新たな人工物に適用する創造性が不可欠です。そして、機械工学科では、物理現象の理解方法と創造的な人工物の設計方法を体系的に学ぶカリキュラムと、学んだ方法論をベースに実際にロボットのような人工物を創造する卒業研究を通して、ロボットなどの高度な機械を創造する力を身につけることができます。ですから、ロボットに興味のある人はぜひ機械工学科に来てください。いっしょにこれまでにない新しい人工物を創造しましょう。


環境・エネルギー問題に興味があるのですが,そのことについては学ぶことは可能ですか?

地球環境やエネルギー問題の根本にあるのは熱力学です。熱の作用で物質の状態がどのように変化し、そのときにどのくらいのエネルギーを必要とするか、といった非常に基礎的な物理法則をしっかりと学ぶことが最重要です。機械工学科のカリキュラムでは熱力学の基礎、熱工学、移動速度論、高速空気力学、燃焼工学などの講義がそのような基礎知識を提供します。また、熱エネルギーは、ほとんどの場合、流体を媒体として輸送されるので(対流輸送)、流体力学の知識もさらにその基礎として重要です。これらの基礎的な科目を学部で履修し、大学院では「開放環境科学専攻」の「環境・資源・エネルギー科学分野」では機械工学科教員の指導のもとでガスタービンや燃焼など関連する研究に着手することができます。

 「環境・エネルギー問題」というのは理工学や技術の問題にとどまらず、経済、政治、倫理、哲学におよぶ広範な「人類の課題」です。このような環境・エネルギー問題のすべての面を機械工学科で学び研究する、ということはできません。ただし、環境・エネルギー問題の根本は、「エネルギーの量的保存」や「エネルギー(あるいは物質)の質的変化の方向」を示す学問 である熱力学を始めとする自然科学に基づいて初めて理解できるものですし、その理解の上に立って、問題解決に向けての科学的方策を提示していくのが工学の使命でし ょう。このような面について学び研究するには機械工学科は最適の学科の一つである と思います。

事実、機械工学科では多くの研究室が地球環境への負荷低減を意図した様々なエネルギー技術の研究に取り組んでいます。私の研究室でも天然ガスを氷状の結晶にして貯蔵・輸送する技術とか、産業廃ガスから二酸化炭素を分離・回収する新しい方式の研究を進めています。


ミクロな現象に興味があります。ミクロ・ナノについての研究は行えますか?

現在熱工学や材料工学など様々な分野において、ミクロな視点からの現象の理解が必要とされています。機械工学科ではミクロな視点からみた工学研究もさかんに行われています。泰岡研究室においては「分子動力学法」という、分子の運動を追跡することができるシミュレーションを用いて、物質の基礎的な性質や現象を調べる研究や、エネルギー貯蔵問題・環境問題などに対処するための研究を行っています。

製造業は富の源泉といわれ、我が国の産業を支えている最も重要な分野です。機械工業はそのうちの約40%の生産量を持っています。IT技術の進歩などにより、微細化・精密化は製造技術の高度化を図る上で重要な方向であり、今後も、日米欧の間で激しい技術競争が繰り広げられる分野です。皆さんの持っているDVDプレーヤーを例に取りますと、少し前まで5GBだった容量がBlu-rayで25GBになり、さらに400GBの次世代ディスクが開発されています。このようなドライブに使われる非球面レンズを製作するための金型は、超精密・微細加工技術により製作されます。

小さい部品を製造するには、非常に高い精度の加工技術が必要です。例えば、直径100mmの部品を精度1μmで加工できたとすると、相対的な精度は10の-5乗ということになります。この精度の比率を直径1mmの部品に適用すると、必要精度は0.01μm(10nm)ということになり、大変高い加工精度が必要なことがわかります。また、このような部品を測定する評価技術にも非常に高度なものが要求されます。

機械工学科では、このような微細な部品の測定技術、例えば、直径100μmの穴の内部の表面粗さを測定する等の研究を行うと共に、マイクロ金型の製造技術の研究、省資源、省スペースの面から最近注目を集めているマイクロファクトリに関連する研究なども行っています。


マテリアル・デザインに興味があります。マテリアル・デザインについての研究は行えますか?

機械は材料からできています。また、ハイテクの代表、シリコンや化合物半導体もマテリアルです。私が学生の頃(〜20年前)はマイクロテクノロジーという言葉がハイテクを代表していました。現在、皆さんもご存知のように先端技術は「ナノ」の領域に入ってきました。透過型電子顕微鏡を用いて単に原子レベルで対象物の観察をするのみならず、ナノ領域で「1つのシステム」を創る試みも盛んに行われています。このことをある人はナノスペースラボと呼んでいます。私自身は固体を扱っていますが、マテリアルは液体でもあり、気体でもあります。氷が水、水から蒸気へと変化するように、自然は変化しています。今後私達は、これらの自然現象を傍観するのではなく、ミクロに捉え、それらを制御し、克服・活用していきます。そこに、「デザイン」の面白さがあるのです。


ヒトやバイオに興味があります。ヒトやバイオについての研究はできるでしょうか?

機械工学科と医学部との連携は40年近い歴史があり、人工心臓の開発、むち打ち症、人工関節や人工靱帯、血管内の流れ、医用画像処理、内視鏡手術、歩行分析などの研究が行われてきました。また、人間生活にかかわるテーマとしては身体形態や運動特性に基づく椅子やベッドの開発、靴の研究、病床家具の設計などが行われています。さらに、コンピュータ内にヒトのモデルを作ることも行われており、この技術を使って、恐竜などの絶滅動物の復元も行いました。これらの研究開発には特殊な計測機器や解析手法が必要で、新しいハードもソフトも開発できる機械工学こそ、生物の基礎から応用まで幅広い貢献が期待できます。 バイオマテリアルという言葉を聞いたことがありますか?ヒトの体の中で骨や関節などの生体組織の代替のために使う人工材料のことです。人間のからだというのは本当にうまくできていて、損傷があっても自然に治癒します。ただ、ケガや病気などでどうしてもからだの一部を人工物に置き換える必要がでてきます。バイオマテリアルの研究をするには、医学や生化学的な知識も必要ですが、人工材料そのものの強度や腐食特性についての知識も必要になってきます。そこに我々機械工学科の出番があるのです。慶應大学には医学部もありますので、実際に、医学部の先生と意見交換をしながら研究を進めることができます。そのような意味で、慶大の理工系学生は恵まれた環境にあるといえるでしょう。


インダストリアル・デザインに興味があります。デザインに関わることはできますか?

機械工学科は、理工学部において唯一インダストリアルデザイナーを生み出している学科です。デザイナーの就職は、現在大変競争率が高く厳しい状況ですが、そのような中で、卒業生は一流企業にデザイナーとして就職し、第一線で活躍しています。機械工学科からデザイン分野への就職が良好な理由は、美大系のデザイナーと異なり、力学や技術を学び、それらの知をデザインへ生かすことが可能なためでしょう。企業も、これからのデザイナーには、そのような人材も強く求めているようです。

ただし、機械工学科では、従来までの意匠を中心にしたデザイナーになることを目指しているわけではありません。機械工学をベースにした工学設計を可能とすることをまず基本としています。それに加えて意匠設計をも可能とする新しいタイプのデザイナー(設計者)になれればと思っています。そのためには、まず、力学を中心とした機械工学や設計工学をしっかり学ぶことが重要でしょう。その上で、企画力や造形能力が必要とされるわけですから、並大抵の努力ではありませんが、卒業生には、それらを可能とする新しい時代のリーダーになってほしいと願っています。


設計に興味があります。設計については学べますか?

もちろんです。力学をベースにモノを「設計」するための様々な勉強をすることが機械工学科の柱のひとつです。そもそも「設計」をすることを目的に機械工学が始まったといっても過言ではないでしょう。

 「図形情報処理」「形状情報の表現」「機械工学創造演習」「プロダクションエンジニアリング」といった実技科目では、人工物を設計するための発想・企画の段階から、デッサン、コンピュータを用いた製図、設計したものの作り方までを、一連の流れの中から学びます。研究室でも、設計に関連した多くの研究が行われています。松岡研究室では「設計方法論」の研究や自動車の防振装置・椅子の設計、山崎研究室では什器や福祉機器の設計、三井研究室ではマイクロマシンの設計、森田研究室ではロボットの設計・・・・・・というように、多くの研究室で行われている研究が、まさに「設計」に関係しています。

日本におけるこれまでの設計は、どちらかといえば、改良型の設計が主体であったと言われています。しかし、これからの設計には、基本特許を取れるような革新的な技術開発を伴う人工物の創生が望まれています。そのため、これからの設計者には、力学などの解析を通じて現象を解明できる能力と、新たな基本構造やシステムが提案・具現化できるリテラシーとしての設計理論の両方が必要になります。従来までの改良型設計においては、学生時代に力学解析や設計理論の知識や能力が十分に備わっていなくとも、企業で設計経験を積むことで何とか対応できた場合もあったでしょう。しかし、これからの設計においては、解析能力等々は不可欠なのです。また、昨今の企業は、入社後に即戦力を求めており、企業内教育もさほど期待できなくなっているとも聞いています。このような企業内事情を鑑みると、力学と設計理論を学生時代にしっかり修得しておくことが肝要だと思います。

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